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上原昇ベートーベンチェロソナタ全曲演奏会第1回
(現代音楽2019年12月号より)


上村昇によるベートーベンのチェロ・ソナタ全曲演奏会。上野真の弾く19世紀のフォルテ・ピアノとの共演が企画の目玉だ。今回は1845年ウィーン生まれのシュヴァイクホーファーを使用。楽器の所有者でフォルテピアノ修復家の山本宣夫によるプレ・トークも入る。さて、歴史的楽器の演奏で定評のある上野は楽器本来の響きをそのまま伝えてくれる。当器の場合、クリアな高音部に対し中音、低音はまろやかだが共鳴しすぎることもない。一方の上村も、モダン楽器ながら弦の自然な響きを軽やかに引き出すため、チェロとピアノ、どの声部も相殺されずに立ち上がってくる。その結果、第1、2番ソナタなど、古典派の様式が明瞭に浮かび上がった。他方、自我との葛藤が見え始める第5番では奏者の息遣いも深くなる。が、決して慎ましさは失われない。楽器、演奏ともに200年前のウィーンの気質を想像させるものとなった。(10月2日、京都府立府民ホールアルティ) (能登原由美)