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ブラームス: ヴィオラ・ソナタ
(季刊ステレオサウンド/ 2021年春号 NO.218)
ブラームス: ヴィオラ・ソナタ第1番、第2番、他
成田 寛(va)、上野 真(フォルテピアノ)
(MClassics MYCL00002)
-豊かな音色に引き込まれる、新レーベル発の聴き応えある1枚-
長年エクストンで腕を振るったプロデューサー・小野啓二氏が独立し、自身のレーベルを立ち上げた。その第1弾として2点が登場した。成田寛はバッハ・コレギウム・ジャパンなどでも活躍するビオラ奏者。国内の実力者が弾くピリオド楽器によるブラームスと言う希少性も手伝って、演奏・録音とも聴きごたえある1枚になった。収録会場は、響の良さで定評ある相模湖交流センター。同じくエクストンを卒業して同センターの館長に就いた敏腕制作者の松田善彦氏が、ディレクターと録音技師を務めているのが面白い。会場の伸びやかなアコースティックのなかに浮かぶ古楽器のニュアンス豊かな音色に、どんどん引き込まれる。再生装置の側にも、この滋味をくすんだ一色に塗り込めず、濃厚な翳りをもって鳴らし分ける能力が欲しくなる。
(宮下博)