Reviews


3つのモダン・タイムズ
(レコード芸術2007年1月号より) 新譜月評 優秀録音


今月は4枚のSACDマルチを含むハイブリット盤を聴いた。これまでで最もその比率が高かったが、いずれも国内制作盤である。そのなかから上野真のピアノ独奏を取り上げたい。一般的にサラウンド・マルチは編成の大きなものが効果的ではなかろうか、と思われているようだが、そのよさや美しさは編成のサイズにかかわらず、独奏曲でもマルチ・サラウンドの効果を十分に味わうことができる。サラウンド・マルチのよさは以前にこのページで説明しているが、圧倒的に生の演奏そのものに肉薄してくることで、ここが通常の2チャンネル・ステレオと最も異なるメリットなのである。実際の演奏会場でも、前方の音だけを聴いているのではなく、演奏そのものの直接音よりもホール全体に響いた間接音が多いのだが、残念ながらそれを具体化しようというソフトはまだ少ない。しかし、非常にゆっくりとしたスピードながら理解されつつあるようで、今後に期待したい。 
(石田)