Writings


英語について
(ムジカノーヴァ 2006年6月号)


 僕の最初の英語体験・・・小学校3年生の頃、兄が近所の英語の先生に習いに行った時に一緒レッスンを受けたのだが、そのテキストがいきなり高校用の英文法の本だったので、数回で敗退した記憶がある。その後又近所のアメリカ人の神父さんにも習いに行ったが、中々モチベーションがあがらなかった。しかし中学校に入り、海外のラジオ放送を短波で直接聞けることが分かってからは、VOA、BBCなどを聞くようになった。雑音混じりだし、内容もあまり分からなかったが、サウンド、アクセントやリズムに少しは慣れたように思う。(今では、ケーブルやインターネットなどで世界中の放送が、FMのような質の音で、簡単に聴くことが出来るので、若い人たちは本当に恵まれている!)

 留学する計画がはっきりしてからは、リンガフォンを買ってもらい独習した。それでも初めて英語圏に行った時は、テレビ・ラジオのスピードや口語には全然付いていけなかった。アメリカ留学時代は、出来るだけ英語しか使わない生活をしようと努力した。知らない学生にもHiなどと声をかけ、不気味がられたことと思うが、中にはとても親切な人もいて、Rの発音を根気良く治してくれたりもした。数ヶ月でかなり色々なことがわかるようになってきて、見る夢も英語ばかりになってきたのだが、その反面月一回の両親との電話(当時国際電話は高かったので、手紙をずいぶん書いた)の間、日本語の単語が咄嗟に出てこなくなってしまったりして、かなり変な日本人になってしまった・・・。

 その後ヨーロッパに渡ったが、英語というのはやはり一番インターナショナルな言葉なので、各国の学生との話もし易かったし、生活をドイツ語に移行するのも比較的楽だった。そんな経験を通して感じたのは、ネイティヴとスムーズな会話が出来ること以上に、「語ることを持っている」ということの方が大事だということ。また新聞・雑誌、関心のある分野の本を、ある程度読めたりする能力が欲しい。そうなってくると、例えばフランス語やラテン語などの知識も必要になってくるわけで、音楽と同じように「これで十分」ということが無いということにもなる。現在はケーブルでBBC、DW(ドイツ)、RFI(フランス)などの放送を時々聞いてブラッシュ・アップしている。

 若い学生の皆さんにお勧めしたいのは、レッスンなどを受ける際にも、自分の意思や考えを率直に伝えようと努力することだ。もちろん単語の正確な意味をある程度知る必要があるが、一番大事なのは、声を出して聞こえるように話をすること、アクセントを正しくつけること、しかし発音を怖がらないこと(インドの人の素晴らしい英語能力を見よ!)、目を見て話すこと、ゼスチュアを日本的にしないこと、などであろうか。