Writings
ピアニストの近況
(ショパン2003年10月号より)
この数ヶ月はずっと、僕にとってのデビューCDとなる、リストの超絶技巧練習曲全曲とトランスクリプション4曲の録音の準備に忙しくしていました。ようやく3日間の録音セッションが8月中旬に終了しました。このCDは来春、たぶん3月くらいにはリリースされる予定です。この春からずっと頭の中はリストを中心に動いていて、いろいろなエディション(特に第2版)を比べ、練習し、解釈上の可能性を探ることはもちろんですが、リストの作品とその人、そして彼に影響を与えたと考えられているさまざまな文学や、人について、歴史について乱読していました。21世紀の日本にいながら、19世紀初頭のヨーロッパ、それも天才の生きた世界を想像するのは簡単ではありませんが……ペトラルカ、ユーゴー、ミュッセ(!)等の作品を読んだり、ゲーテのファウストのドイツ語のCDを聴いたり……でも最終的には、そういった知識などを超えたところの、曲との対話というか、曲と〈一緒に生きる〉という部分が大事で、そこが難しいんですよね.....。
この秋は、2曲のブラームスのコンチェルトを演奏する予定です。あと、来年6月には、京都市交響楽団とのデビューがあります。指揮者は、マエストロ岩城で、曲目は未定ですが、バルトークの1番か、2番が演奏できたらうれしいと思っています。